からだの器質的な変化
フロイト先生のこころの防衛機制については、過去にも幾度かふれてきました。
不快な感情を弱めたり避けたりすることで精神的な安定を保つこころの働きです。過去に傷ついた体験や受け入れがたい感情を意識しないで済むように、自我の働きによって無意識に抑え込むなど、要すると「感じない」「認識しない」で済むようにする働きです。
繰り返されるストレス状態や、長期間のダメージから自分を守るための、働きです。
代表的な、防衛機制には「抑圧」や「投影」などがありました。
こころだけではなく、どうやら「からだ」も自分を守るために、形体を変化させたりするということが研究でわかっているようです。
形体を変えるということは、機能を変化させるということです。
これらは、小児神経科医で医学博士の友田明美先生が発表したものです。
詳しい記事は以下のリンクにて見てください。
要約をしてみたいと思います。
マルトリートメント(不適切な養育)で起こる脳の器質的変化
感情の中枢である扁桃体は、刺激を受けるとストレスホルモンを分泌するよう副腎皮質に指令を出す。虐待など過度のマルトリートメントを受けると、
①扁桃体はしょっちゅう興奮を起こして大量のストレスホルモンが脳の中に放出されることになり、それが脳に重大な傷を負わせる。この状況を回避するために脳が選んだ方法が、外部から入ってくる情報量を減らす、つまり変形することなのです。
②見たくないものを見続けなくていいように「視覚野」が萎縮する
③痛みを感知したり、起こっていることを認識したりしなくていいように「前頭前野」が萎縮する
④暴言を受けることで変形する「聴覚野」の場合は、ほかの場所のように萎縮をするのではなく、肥大する
なぜ肥大するかというと、シナプス(神経と神経の接合部)の「刈り込み」が止まってしまうからで、シナプスの「刈り込み」は、盆栽の剪定(せんてい)のようなもので、いらないところを刈り込んで整えていく過程です。その剪定がストップしてシナプスが伸び放題になり、雑木林のような状態になっているのが、変形した「聴覚野」です。これも、聞きたくないことを聞かなくていいように、音が拾えない状態に自らを変えてしまった結果です。
すべて脳が自らを守ろうとする自己防衛反応と言えます。
ポリヴェーガル理論の青色(背側迷走神経)
ポリヴェーガル理論でも、行動と身体の防衛反応として、赤の交感神経の作り出す闘争or逃走の準備状態をつくりだしたり、青の背側迷走神経による、想定を越えたストレスや出来事から心身を守るために、死んだふりのようにからだを硬直(フリーズ)したり、外界からの刺激を(シャットダウン)するということがあります。
また、トラウマティックな出来事や記憶から心身を守るために、「解離」という空白状態を作り出したりなどということがあります。
こころというのは、不思議なことをします。
また、危険な状況での、「迎合」や「過剰適応」、親密さを作り出すストックホルム症候群のようなこともよく知られた人間の反応行為です。
それらはすべて、生存戦略です。
もうひとつの変化の可能性~マインドフルネスにより前頭前野を鍛える~
マルトリートメントによって、脳のさまざまな部分が変形することは、先に書きましたが逆に、マインドフルネス瞑想によって前頭前野が活性化し、脳の形が変化することが科学的に証明されています。マインドフルネス瞑想をおこなうことによって、実際に前頭前野が肥大化するのです。前頭前野は脳の前方に広がる領域で、理性や論理的思考を行う場所です。
マインドフルネス瞑想によって前頭前野が活性化すると、次のような効果が期待できます。
- 集中力や注意力の向上
- ぐるぐると思考が巡ってしまう状態から脱して自分や周囲の状況を正確に認識できるようになる
- ネガティブなメッセージを発しがちな扁桃体を抑制することができる
- また、マインドフルネス瞑想によって、脳内物質であるセロトニンが増えることもわかっています。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、心を安定させ明るくする役割があります。
FPPとTPP
マインドフルネスのやり方については、いろいろとありますが、シンプルに実践しやすい方法(ほんとうは方法論などないのですが)を、次回のブログにて書いていきたいと思います。
今回はここまで。